最初のマイ弓具は、弓具店の出張販売で揃えたものだった。的前練習に入ったあたりで弓具店を呼んでくれ、ここから選んでねと提示された中から「これかな？」と直感で、スターターセットともいえる弽と矢と矢筒を購入した。その頃は何が合うのか、好みなのか、そんなところは分かっておらず、無難なところで揃えた状態だった。
　借り物でない自分の道具で練習するというのは、ステップアップした気分だった。下手くそで筈巻がすぐ取れてしまったから、修理ついでに矧糸を別の色に巻き替えた。初代の矢がぼろくなって次を求めた時は、どうしてもジュラ矢の感触が好きになれなかったので、矢師に相談しつつカーボン矢を自分好みでオーダーした（カーボンシャフトはＫＣしかなく、今ほど一般的でなかった時代）。弓は弓道会の備品や先生の私物を借り、４年目あたりでグラス弓を購入したら、握りはもちろんのこと、矢摺籐や切詰籐を好みに巻き替えた。同時に、弓袋や弓巻、弽袋、下弽、風呂敷といった布製品は気に入った柄の布で縫い、弦巻、矢筒なども自作してきた。もともとは作ることが目的の手芸好きで、それまでは完成品を持て余すことが多かったけれど、弓に関しては使うこと前提で欲しいものを作った。また自作できないものについては、いろいろなメーカーや銘柄を試して、より自分好みで使い勝手の良いものをと選抜してきた。
　そうしていつしか身の回りは、自分の選んだ・作った・手入れしてきた、お気に入りに囲まれていた。でもここで終わりということはなくて、より良いものをと求めているから、この先も出会いは待っていて、それがまた楽しみだったりする。
　弓を引くことのどこが面白いのかと聞かれた時、何と答えればいいのかと迷う。よくある回答は中ったら爽快といったころか。大して中らない自分としては、むしろできないからこそあれやこれやと仮定して、試してみてと、興味が尽きないところだろうか。そしてその相棒は愛着のあるもの、あるいは新しく手に入れたもので、そんなところも要素の一つとして確実にあるんじゃないかと思っている。