️前回大会のどこかで、次は茨城と聞こえてきた。色々な場所で引きたい身としては、地元開催と知って内心がっかりしたけれど、それはそれで裏方視点の記事が書けるのではと思い直した。何かしら手伝えればという思いと、そもそも女子会とはどんなものかという興味もあって、潜入してきました。（画像をクリックすると、別窓で拡大表示されます）

２月～３月下旬　女子会入会

手始めに、女子会に入ろう。しかし支部内に会員はなく、伝手がない。前回大会の情報も他所から仕入れたくらいで、正規ルートでなかったせいか、事前に大会資料も届かなかった。別支部で会員の知人に話をしてみて、そこから意向を伝えてもらうよう頼んでみる。
３月下旬、地区役員の連絡先を教わり連絡を取ると、住所に段位や生年月日等を聞かれ、来月中旬に総会があるのでその案内を送るとのことだった。数日後に各種資料の入った封筒が届き、まずは総会に参加と返答する。面識ないけれど、何とかなるだろう。

４月中旬　総会・模擬大会

模擬大会を行うとか道着着用と案内にあったから、大会時の荷物でいいんだよねと持っていく。弓道場に入るとテーブルに名簿があり、自分のところに出席の◯をつけるようだ。着替えて戻ると地区毎に会費の徴収をしていたので、年会費を支払う。数人の知り合いの他は、講習会の講師などで顔と名前は知っていても普段は接点のない人、見た覚えはあっても名前を知らない人、そして大多数の顔も名前も知らない人だった。
始めに総会。事業についてや決算予算、そして件の女子大会について。活動としては、年数回の研修会や講習会、年１回の大会をやっているようだ。会員名簿を見ると、高段者ばかりかと思いきや、三段以下も割といる。30分ほどで終了。模擬大会前の休憩時間中、新入会員に係の割り当てのための聞き取りがあり、目が悪いから看的は無理かもなどと答えた結果、記録係になった。係に合流して説明を聞く。もらった資料にはVer2とあって、前年度からすでに始まっていたようだ。
昼休憩の後に設営、実際にパソコンやインカムを触ってみる。その後、模擬大会。立順の都合で引いてから係の仕事をする。３人立４射場の第３・４射場のPC係。看的が表示した◯×の通りに入力し、横一列終わったら手書きの人と確認、それを４本繰り返し、的中数も確認する。看的との照合でも間違いなかったら、手書きの人が黄旗を上げるので自分も「保存」をクリック。その繰り返し。システムがダウンした時のバックアップとして、手書きは必須らしい。レーザープリンター出力に鉛筆で記入というのも、水濡れに備えたものだろうか。
予選が終了したら、決勝は第１・２射場側がやるとのことで待機。有段者の部が終わったところで、県連競技部の講師から講評がある。それを踏まえて称号受有者の部。看的で訂正があった想定もやってみる。大会終了後、撤収作業。そして閉会式、解散。
予定表によると研修会はあと２回あり、県の女子大会でリハーサル、そして本番となるようだ。

５月中旬～９月中旬　大会にまつわる諸々・宿泊予約

県連の大会で記録係をやったり、忘れずにこの大会に申し込んだり、遠的の練習ついでに弓具店に寄ったり（後述）する。６月は湿気、８月は高温に耐えながらの研修会では、内容や段取りがブラッシュアップされたりと時は過ぎていった。大会パンフレットのデータももらった。参加者は、参段以下の部175人、四段・五段の部241人、称号受有者の部202人の計618人。
年間予定表によると、大会前日午後に準備とある。連日水戸まで行く＋当日の早起きは考えるだに辛そうで、近場に宿を探すと、３連休の初日のせいか通常より高めの値段設定だった。水戸市街で駐車場別かちょっと離れて無料か、その他あれやこれやを天秤にかけ、少し遠く（とはいえ自宅よりはずっと近い）ところに予約する。せっかくだから、午前と夜にどこか行こう。

５月24日　市毛弓具店

〒310-0015　茨城県水戸市宮町2-6-19　GoogleMap
定休日：正月休み（1月1日～3日）
営業時間：平日 8:30～19:00　日祝 8:30～18:00

店内入って右手に小物類や弓矢と商談スペース、その奥に作業スペース。左手は倉庫兼巻藁道場といった感じ。家族経営と見えて、店員同士の呼びかけが気安い。何をするともなく椅子に座っていた男性が、客がはけたところを見計らって弓の準備を始めた。女子高生？もやって来て、巻藁指導が始まった。

９月27日　女子大会

稲刈りもだいぶ進み、実りの黄金色とひこばえの緑、そばの白い花が広がる。畦道には彼岸花の赤い群生、道路端には山栗の毬（いが）が転がっていて、すっかり秋の景色になっていた。
準備を手伝い、開会式の後、射場に記録係の机と椅子を運び込んで、三段以下の部、第１・２射場の手書き。四段・五段の部に入ったところで交替して準備。選手としては、本番同様に第４控に集合、第３控で弓具点検、第１控で弦巻を預けて、一番遅い立の３本目で入場し、始めの号令で射位に入る。「大三取懸け打起し」との貼り紙は会打起し想定なんだろうけれど、自分のペースでは慌ただしく、幾らか早めに取り懸ける。退場して弦巻、矢返し所で矢を回収。その後、有段者の部の競射。続く称号受有者の部の第３・４射場の交代要員として待機して、競射の後に閉会式。通常ならこれで終了だろうけれど、昼食の後にもう１巡。改めての閉会式で、本番当日と前日準備に関する連絡があった。前日は近隣の人たちがやってくれるとのこと。大会パンフレット等一式も渡されて、ゼッケンと昼食券が入っているので絶対に忘れないように。紛失が怖いから車に積みっぱなしにしておこう。

９月下旬～出発前日　スケジュール作成・準備

前日の用がなくなったから、午後もどこか観光しようか。元々は茨城県民でないから、遠足などで行くであろう定番スポットには縁がなかったし、水戸も武道館に直行直帰でそれほど馴染みがない。それに宿の近辺には茨城ローカルチェーンの本店があるから、食事の当てになりそうだ。
２日前、スケジュール決定。宿へ朝に寄るから荷物を置かせて欲しいと要望する。
前日、ようやく準備に動き出す。弓矢カバーを引っ張り出し、添え木代わりの矢筒の配置を変えてみたところ、裏反りが20cm近くある竹弓もぴったり収まった。これなら、竹弓で飛行機も大丈夫そう。

10月11日　茨城観光
　出発、寄り道

雨が降っていた。強くはなくても雨具は必須で、止むこともなさそう。一応準備していた折りたたみ自転車は置いて、車に荷物を積み込み、出発。キンモクセイが香っていた。筑波山北側に開通したばかりの上曽（うわそ）トンネルを通る。3,500ｍは意外に長く、平たく田畑の広がる風景から、起伏があり果樹の目立つ風景に変わった。柿が鮮やかに色づいている。雨が強くなったり弱くなったりする中、ナビに案内されるがまま進むとやがて栗畑に変わり、水戸市街を抜け那珂（なか）川に至ると、再び平地が広がった。
まずは知人おすすめの、パン工房ぐるぐる那珂本店でカレーパンやクリームパンなどを買い込み、続いて宿に寄って荷物を預ける。ひたちなか市近郊親善射会の時に寄れなかったサザコーヒー本店では、気になっていたメニューは欠品らしく、将軍珈琲ジェラートにする。

11:00　国営ひたち海浜公園

本当は園内でブランチと洒落込みたかったけれど、雨でそうもいかずに車内で済ます。入園料に＋季節料金350円で、券には赤いコキアの写真が印刷されていた。案内に従って道を行く。雨のせいか客は少なく、通りがかりの広大な芝生の広場も無人で、遠くに観覧車が霞んで見えた。共用面積237ha（計画面積350ha）だそうで、馴染みのある広い所と比べると、明治神宮72ha、筑波大学258ha。徒歩で回るのは無謀そうで、移動にはシーサイドトレインなる乗り物や自転車が必須だろう。今回は時間も限られているからコキアのみ。
みはらしの丘が見えた。赤く移ろっているところで、日当たりの関係だろうか、緑ばかりの一角もある（写真ふもとの緑のエリアはコスモス）。人が少ないおかげで急かされることも待たされることもなく、のんびりと丘を登りてっぺんに着いた。曇天に眺望は望めず、海もどんよりとしている。外国人が割といて、一人の女性にスマホを渡され撮ってと頼まれた。言葉は分からない。つづら折りの坂を下ると視点が変わって登りとは違った景色が見え、コキア以外の草花にも目が向くようになった。
車に戻った頃には、腿から下がすっかり濡れていた。カバーを付けていた靴は無事なのがせめてもの幸い。今シーズン初の暖房を付ける。温度も風量も最大にして、少しでも濡れたところを乾かしたい。

12:30　移動

なるべく海沿いの道を進む。途中、駐車場らしきところに車を停め服を乾かしながら、水平線に寄せる白波、岩に砕ける飛沫を眺める。墨絵のような色のない景色でも、海なし県出身内陸育ちにとっては、それでも珍しいものだった。

13:00　アクアワールド茨城県大洗水族館

まずは券売機でチケット購入、数種類あるらしく、ミズクラゲ柄が出てきた。中へ進むと半地下のようなところに人だかりがある。オーシャンシアターなるショー水槽の中が見られ、イルカが背面泳ぎなどしてうろついていた。モニターにはショーの様子が映し出され、今はアシカの出番のようだ。フィナーレになると、待ってましたとばかりにジャンプして、派手に水飛沫を上げている。
大小さまざまな水槽を見て回る。サメの飼育種類数日本一だそうで、何故かサメやイルカの胸びれ（ペンギンの翼（フリッパー）も）の角度に心惹かれる身としては、いろいろ見られて面白かった。一通り巡ったかとカフェに行き、シャークコンボなるサメ肉ナゲットと鮫カツのセットで休憩する。館内図を確認すると、なごみの海ゾーンを取りこぼしていた。エトピリカのもぐもぐタイムなど見て、土産物屋を覗き、帰りの混雑にはまる前にと16時頃に出た。

16:30　寄り道、夕食、宿へ

時間つぶしにジョイフル本田ひたちなか店に寄る。広さがいつも行く店の倍以上とのことで、どんなものかと気になっていた。ホームセンター部分はそう変わらなくても、隣接のショッピングモール、敷地内には映画館などもあり、広大な駐車場も含めての巨大さだった。文具画材や工芸材料が主体のジョイフル２には、すでに来年の手帳やカレンダーが並ぶ。一時期とんと見なくなった籐があった。矢擦籐や切詰籐になりそうなサイズもある。
夕食にグルービー東海本店へ。開店15分過ぎで席は８割くらい埋まっている。サラダ付きで私には量が多いことは分かっているので、今日の食事は控え目にしてきた。メニューを眺め、どんなものかと気になった「ピラフ　エビワサビ風味」を注文。緑色で刻み海苔が乗った和風な見た目ながら、バターのこってり、そこにわさびの刺激が加わる。
19時前に宿にチェックイン。部屋に入るとテーブルの上に弓矢が横たえられていた。上下逆に立てかけられるよりはいい。いよいよ明日は本番だと、早々に休むことにする。

10月12日　全日本女子弓道大会（東日本の部）
07:10　到着、準備

混雑を避けるため、開門の７時からずらして来場するようにとの通達があったので、まだ早いかなと思いつつ到着。特に混み合うことなく駐車場に車を停められ、武道館に向かう。足元にはどんぐりが転がっていて、フェンスにはモズのハヤニエのバッタが刺さっていた。武道館入口に立て看板がある。今大会のものかと思ったら、大道場での空手大会のものだった。普段は８時開場だけれど、特別対応かすでに入口は開いている。
荷物置場の遠的場に向かうついでに控え室の剣道場と柔道場を覗くと、床全面にシートが敷かれ、入口から見て左右に分けるように弓立が並んでいた。遠的場への通路前スペースには、水戸といったらこれとばかりに、黄門様ご一行の顔はめパネルがある。後日、あいまいだったお付きの２人の役どころを調べてみると、右で印籠を掲げているのが硬派で実直な格さん、左が軟派で好色な助さんらしい。縞柄に柄物と、衣装でも性格を表している。
的場では的の設置が始まっていた。遠的場に荷物を置いて弓を出し、着替えを持ってひとまず係に合流。パソコン類のセッティングは済んでいて今のところ手伝うことはないらしく、着替えに行く。弓道場から奥のエリアのトイレや更衣室はすべて女子用になるから、あえての男子更衣室に入ってみる。館内図の通り女子更衣室より2.5倍くらい広かった。

07:45　集合、ミーティング、開会式

点呼、打ち合わせなど。係と名前の入った名札が配布されたので首にかける。割り当ての仕事は受付終了まで特になく、準備中の茨城土産の売店を覗いたりする。干し芋、納豆、梅干などが並んでいた。入場が始まったようで、弓矢を持った人が続々とやって来た。
８時45分過ぎ、有段者の部の受付が締め切られ、立順表の出力が始まった。１セットずつホチキスで止めて、必要部数を係毎のクリアファイルに入れていく。潤沢な資金と通信環境があってタブレット等を係全員が持てたら、この手間もなくなるのではと妄想する。
９時に開会式。歓声が上がったと思ったら、みとちゃん（水戸市のイメージキャラクター）が現れた。横幅が広いので、出入口をよちよちと横歩きで入ってくる。作業が終わった頃には開会式もほぼ終わりで、どんな様子だったかは分からない。

09:30　競技開始、記録係、昼食

三段以下の部、第１・２射場側の記録係。コップ式水筒では水分補給のタイミングがつかめなかった。口寂しさもあり、こっそりとのど飴をなめてしのぐ。訂正などのトラブルなく進み、11時過ぎ、四段・五段の部に入ったところで交代。スムーズに運んでいて、予定時間より早まっているようだ。弁当の配布が始まっているから、今のうちに腹ごしらえしておこう。
弁当配布所の向かいには弓具店ができていた。後で見に行こう。役員控え室の会議室に行く。テーブルに茶菓子があった。各県の手土産や国体のお土産だそう。弁当は「印籠弁当」なる葵の紋の入った２段の弁当で、容れ物は何かに使えそうと持って帰りたくなる。青梅の甘露煮、煮物のにんじんは梅の形と、おかずは梅がテーマらしい。紙パックのお茶付き。

12:10　予選

まずは廊下の第４控に集合。割と地連毎にまとまっているので、知り合いが近いのはなんとなく心強い。第３控で道場内に入って弓具検査。弓立に弓と羽根を上にして矢を置く。第２控、第１控と移動して、弦巻を預ける。さぁやるぞと意気込んで入場したものの、空回りして終わって退場、ゼッケンを返す。２中以下ゼッケン回収と書かれていた紙が、３中以下に訂正されていた。ゼッケンは次の大会へと引き継がれるので、１枚たりとも失くしてはならないそうだ。反省点を探しながら弓矢を片付け、道場へ様子を見に戻ると、すんなり決まったのか競射は終わっていた。次の準備に表彰式後に射場へ入った時、人がかぶっていないみとちゃんが撮れた。

14:00　称号受有者の部

第３・４射場の交替要員として待機。弁当についてきた紙パックの緑茶を持ち込んだら具合がよかった。水筒ではコップに注ぐ余裕もなかったけれど、ストローなら目を離さずに水分補給できる。途中の数立を手伝い、15時30分頃に予選終了。係として割り当てられた仕事も終了。休憩がてら弓具店を覗き、話をしているうちに拍手が聞こえてきた。優勝が決定したようだ。競射に十何人も残ったら、なんて想定を研修会でやったけれど、結局その出番はなかった。でも、試しにあれこれやってみたことは無駄ではないと思う。

16:00　閉会式、片付け

次回は山梨県で開催とのこと。閉会式の裏で片付けが進んでいたようで、道場内は気づくとほぼ終わっていた。控室の床のシート巻きを手伝う。17時過ぎに片付け完了、15分頃に集合して終わりの会的なものがあり、30分頃に解散。無事に済んだ安堵感と、やり切った高揚感とでもいうのか、今更ながら妙に浮かれた気分になった。着替えて武道館を後にした時には、もうすっかり暗くなっていた。

18:00　帰路

茨城観光の締めに県庁に寄る。展望ロビーへの直通エレベーターはガラス張りで、最上階まで一気に上り夜景が遠く広がっていく。周辺には他に高い建物はないので見通しも良く、大通りの形そのままに光が連なっていた。下の階はガラス張りの吹き抜けで、対岸のフロアを見ると、足下にも夜景が広がり宙に浮いているようだった。空腹でなかったら長居したかったと後にして、帰り道ついでに回転すしまるくにで夕食。リーズナブルながら職人が握ってくれる。締めにわさびかんぴょう巻きを食べながら、そういえば昨日もわさび風味だったなと思う。

「競技力って、中てること？」
　誰かのこの一言が、心のどこかにひっかかっている。個人は競技規則だけでいいかも知れないけれど、あちこちでやらかした過去を省みれば、運営についても分かっていれば、より協力的に参加できるのではないかと思う。そして団体としては、大会が開催できてこその競技力かもと、そんなことを考えた。