あれは３月中旬頃、忙しい仕事からの現実逃避に、確か「祭　弓道大会」と検索していた時のこと。画像検索で、弓を引いているものばかりが並ぶ中、異彩を放つ画像があった。何だろうかと見てみれば、春日部市の「藤まつり弓道大会」の様子らしい。
　春日部で藤といえば、樹齢1200年（！）の「牛島（うしじま）の藤」が前々から気になっていた。さらに周辺の地図を眺めていると、近くに数件、温泉があるらしい。帰りに寄れば１日楽しめるなと思いついて、行ってきました。（画像をクリックすると、別窓で拡大表示されます）

３月中旬〜前日　申し込み・プラン作成

春日部市弓道連盟のホームページには、今年の実施要項がまだなかったので、とりあえず行き帰りのルートを考えておく。電車では遠回りになるから車でと思いつつも、利根川や江戸川に阻まれて、すんなり行けるルートがない。隣の県なのに、馴染みがない理由が分かった。
４月上旬、実施要項がアップされたのを確認して、他県民で全弓連に未登録でも参加できるかどうかと問い合わせたところ、参加可との返答だったので、そのままエントリーする。
今年は桜が早かったけれど藤も同様で、１週間前には見頃とアナウンスされていた。残っていたらいいなと願いながら日々を過ごし、もう終わったなと諦めた頃に当日となった。

４月29日
08:20　到着

曲がるべきところをうっかり直進して越谷市に行ったりしつつ、駐車場である大沼グランドに到着。そこからの歩道には藤棚が続き、しかし花はすっかりなくなって、グリーンカーテン（ルーフ？）となっていた。
武道館へ到着すると、まだ開場していないようで人の列があった。一瞬、鎌倉を思い出し、事前登録だから慌てることはないと思い直す。貼り紙が目に入ったので見てみると、弓道会ごとに受付や控の場所が割り当てられているようだった。

08:30　受付

人波に続いて中へ入り、受付をする。大会関係者とおぼしき人は、藤色の着物で大会の雰囲気を盛り上げていた。参加費1,500円を支払って、ゼッケンと参加賞のタオルを受け取り、割り当ての場所に行く。武道館は南側から柔道場、通路、剣道場、弓道場と並び、控室は柔道場と剣道場で、その壁に弓道会名の入った貼り紙がある。場所取りにうろつく必要も心配もなかった。また後に気付いたけれど、立順に並んでいるので、あの辺りが控に行ったからそろそろだな、と準備の目安にも役立った。
通路の奥にトイレと更衣室があったので着替えに行く。ロッカーは50円の戻ってこないタイプだったけれど、弽や財布などの手回り品以外を入れておくことにした。

09:00　開会式

剣道場で開会式。さすがに道衣の下に長袖を着る人はいない。平成のうちにあと１回大会ができると話をしていて、いつ始まったのかと思ったら、開会宣言の枕だった。その後、国旗拝礼、あいさつ、競技説明など。風船に当たると特別賞とか、筈こぼれも引き直せるとか、掃き中りも隣の的に中っても○（ただし、中りは的でカウントされるとか）と、お楽しみ要素の多い大会のようだ。最後に、これから矢渡し、矢通し（？）があると言っていた。
剣道場と弓道場の間の観覧席にはブルーシートが敷かれていて、足袋のまま出られるようになっていた。安土には藤の描かれた帳がかかり、矢除けにも藤や大凧が描かれている。矢取り道や射場にかけては、めでたげに紅白幕が巡らされ、あちこちに藤の造花が飾られていた。
矢渡しは鏑矢を１本で、立射だった。放たれた矢が帳を落とし、安土が現れる。中央に塔、両側に居並ぶ武者という絵柄だった。そして太鼓や笛の音が響き、ナレーションから寸劇（？）が始まる。大島光義という武将の、塔の窓に矢を射込むというエピソードらしい。どういう仕掛けか、空中で矢が止まったのは、演出だったのか、ハプニングだったのか。大島光義役のおじいさんが揚々と引き上げていった。

09:30　競技開始

道場は４〜５人立くらいだろうか、そこで１人立６射場とのことなので、どんな具合なのか見てみる。入口は道場中央で、放射状に本座に行って椅子に腰かけて待ち、そして本座から射位に入ったら、扇の的のように足元の矢立に矢を入れて１本ずつ引いていた。６射場なので、前の人を待たずに引いて良い。的の中央には金的大の風船があり、これに当たると太鼓が打ち鳴らされる。そして引き終われば、大前の右前側へ退場していった。
控室に戻り、近隣の弓道会の人としばし話をして過ごす。ここでも貼り紙が役に立ち、道場の活動時間など聞けた。その後、進行状況を見に行くと、いつの間に、剣道場は卓球場と化していた。

11:30　一手・待機

まず一手。安土の絵は紙製なんだろうか、外れても音がする。プス（外れ）、パン（中り）、バン（風船）といった具合。矢を回収して控室に戻ると、弁当が置いてあった。柔道場、剣道場内は飲食禁止なこともあり、剣道場の２階観覧席に行く。大会は２巡目に入ったようだ。
待ち時間、武道館内をうろうろする。コンクリート打ちっぱなしで、おおむね天井が高く移動しやすそうなのに、玄関や退場口の外など、天井が低いところが罠のようにあった。朝、受付があったところには、安土の絵の説明パネルと寸劇の原作本（「九十三歳の関ヶ原 弓大将大島光義」近衛龍春／新潮社）、大会の歴史と的絵のファイル、衣裳が展示されていた。
剣道場の一角に人だかりができていたので、見ると弓具店の出店があった。ちょうど握り皮を切らしていたので、購入する。
今さらながら立順表を見てみる。最後は333番だったけれども、不参加がちらほらいるので、実数はそれより少ないだろう。とはいえ、弓道会主催で300人クラスとなれば、大きな大会だと思う。

15:30　四つ矢

特筆すべきこともなく終わってしまった。弓矢を片付けた後、ゼッケンをどうすればいいか聞いてみたところ、飛賞の引換券代わりになるので、閉会式まで返さないでいいとのこと。16時になると、競射が始まっていたので、今のうちに、着替えて帰る準備をしておくことにした。

17:00　閉会式

開会式と変わらない位の人がいて、ここまで残っているのは珍しいなと思う。上位入賞者の表彰、飛賞の授与と進行して行くうちに、抽選会のような雰囲気となり、何となく浮かれた雰囲気のまま、17時30分頃、閉会となった。
今回は、牛島の藤を見に行くつもりはないけれど、18時閉園なので終了後は難しそう。一番込む時間帯だろうけれど、一手と四つ矢の間に中座するのが現実的だろうか。

18:00　帰路

途中、某温泉施設に寄る。ゴールデンウィークとあって人が多く、入館制限で少し待たされたけれど、その間に日が暮れ、雲のない空に満月に近い月が出ていた。露天風呂では木々の葉を透かしてそれが見え、なかなかに風流だった。
帰り道、街灯の少ない田んぼの広がる道に至ると、水面が月光を反射して、風景が白く浮かび上がって見えた。夏は夜。月のころはさらなり……なんてことを思う。もうすっかり初夏だった。

　今回この大会に参加して、楽しみやたしなみには週１でもいいけれど、大会で不安なく納得できる射をしたいとなると、それでは全然足りないと痛感した。良いことか悪いことか、欲が出てきたんだろう。とはいえ、現実的に週１以上は無理なので、その範囲でできることを考えてみよう、そんなことを思い始めた。