ある時、強化選手選考会とやらに参加してみないかと誘われた。およそ洟（はな）も引っかけないみそっかすではあるけれども、参加費なしで遠的ができるし、上手い人を見て学べるところがあるだろうし、準備片付けの人手の足しにはなるだろうと、２ヶ月後の回の参加を目指すことにした。
　まずは坐射20射ができなければと、手抜きなしの四つ矢坐射をやってみた。その１立だけで筋肉痛でよちよち歩きになり、あまりの体力のなさにやめておこうかと弱気になった。翌週、同様に１立やってみたところ、筋肉痛にはなったものの前回よりは軽い気がした。そのまた翌週、今度は２立やってみる。やっぱりよちよち歩きになったけれども、何とかなるかもと思えてきて、少しずつ坐射を増やしていき、そして当日、無事坐射20射を持ち堪えられた。
　とりあえず３回やってみる。何かを始めるとかワンランク上を目指すなど、着手してみるとたいてい１度目はうまくいかない。そこそこいけるんじゃないかと思っていたから、いざ現実を知ると愕然とする。２回目はそれを踏まえてできない前提で取り組むからか、まったくダメではない気がしてくる。そして３回目になると、最初のダメさ加減と比較すればいくらかましになっていて、現状を把握し今後の課題として取り組む筋道も見えてきて、ひとまず３か月続けてみようかと取り組み始め、気づくと１年経っていたりする。そしてささやかでも、努力は身になっている。
　　成功したのは途中でやめなかったから。
　　レベルアップにワープはない。
　そんな言葉を思い出す。３回やってやっぱりダメだったとしても、時期尚早だったと持ち越して、少しずつ、一つ一つ積み上げて、いつかまた再チャレンジする。ずっとそうやってきての、いつかの未来だった今がある。