弓道の特性

1. 全身の筋肉の静的緊張と努力を要する運動である。
一回一回に要する緊張努力の時間は比較的に短いが、全身的に緊張し、瞬時に解禁されるために、深呼吸を伴い血行を促がし、内臓諸器官を発達させ筋力を増すことができる。
2. 正しい姿勢を要求する運動である。
正確な命中のためには、安定した正しい姿勢が要求される。そのため脊柱は進展され、胸郭は拡張され、上下、左右に均衡の取れた正しい姿勢を育成するのに役立つ。
3. 正確さを要求する運動である。
筋神経がよく協応しなければ、正確な的中を期することはできない。そのため筋肉の伸縮性、関節の可動性を高め、筋力を増し、神経機能を向上させ、筋神経の協応を促進することを要求する。また回数を重ねることによって、その正確さを持続する持久性も養い、結局は押す、引く、的にあてる等の基礎的運動能力を向上させるのに役立つ。
4. 自己統制を要求する運動である。
弓道の本質は、自己と弓矢的との合一にある。したがって情緒の安定が強く要求され、冷静、自制、分析、決断等の精神機能が増進される。
5. スポ－ツマンシップを要求する運動である。
指導に当たっては、常に人格の陶冶に努め、術理の研究・心身の鍛錬に励み、勝敗や技術の巧拙にとらわれることなく、師表にふさわしい態度を堅持する。
6. 安全性についての発達を促す運動である。
不注意に弓を引けば障害が起こりやすいので、実施者も見学者もともに障害防止に最新の注意を払うことが必要である。すなわち、実施者は弓具を点検し、注意深く弓を引き、見学者は所定の規律に従い注意深く見学することが要求される。これは自他の安全についての理解、技能、態度、習慣の育成に役立つ。
7. 個人でも楽しく行うことのできる運動である。
弓道は本質的に自己と的との関係において行われ、成功・失敗の原理によって興味が持続されるから、自由な時間に個人でも楽しく行うことのできる運動である。
8. 誰でも行うことのできる運動である。
弓道は誰でも容易に始めることができる。また、弓の強さ、時間、距離、回数等は自由に変えることができ、室内でも屋外でも行うことができる。すなわち性、年齢、身体の強弱に応じて適当に行うことができる。
9. 疲労の少ない運動である。
一回ごとの緊張、努力の時間が比較的短く、各回の間に適当な間隔を置くことができるから、特に間断なく長く継続しない限り、疲労することが少なく、レクリエ－ションとしても最適である。
10. 知的発達を図り、教養を高めることのできる運動である。
弓道は歴史の古いものであり、精神的、技術的に深く研究が積まれたものであるから、その一端に触れることにより、尽きない興味を覚え、知的に研究する動機を作り、高尚な趣味としての教養を高めることもできる。

昭和６２年４月２３日制定
日本武道協議会