これからの練習は寒いだけに辛い。何しろ一般的な道場では、屋根はあっても壁一面は開け放たれて、情け容赦なく風が吹き込んでくるからだ。しかし、寒いからと着込んでしまうと、腕まわりや肘のあたりに違和感を感じて動き辛くなり、思うように弓が引けなくなってくる。そうなると射が崩れる → 変な癖がつく → 的中率が落ちる → つまらなくなる、なんて可能性も出てくる訳で、そうなれば練習する意味さえなくなってしまう。
　ある日ふと思い立って、サイズを間違えて小さい物を買ってしまい、たんすのこやしになっていたウールのベストを引っぱり出してみた。そしてそれをＴシャツの上、道衣の下に着てみると、期待に違わずシャツをもう一枚着るよりも腕まわりがきつくならず、また違和感も感じなかった。確かに腕のあたりは寒いけれど、背中がそれほど冷えないので何とかしのげる。しかも着物を着る時に襦袢の下に着てみたところ、上半身が貧弱なところもいくらかカバーできるようだった。
　道衣の下にはベストだな、そんなことを考えていたら、弓具店のホームページで防寒ベストなるものを見つけた。注目商品だそうだが、発想は私のウールのベストと同じところにある……かも知れない。