以前、道場で一休みしながら雑談していたら、こんな話題になった。

　釣りの上手い人は、何をするにも手際がいいけれど、それは弓でも同じではないか？

　言われてみれば、まったくその通りな気がした。確かに弓の上手い人は、矢番えや手の内を調えるといった動作はもちろん、弽の着脱も、中仕掛や弦輪を作る時も、矢取りも、また着替えや片づけも早い。スピードが速いとか、せっかちとかいうのではなく、手際がいい。人によっては見ていて気分が良くなるほど、さっさとして無駄がない。
　言ってみれば、手際がいいから無駄がなく、無駄がないから洗練されて、洗練されているから上手く、上手いから手際がいいのかも知れない。手際がいい、無駄がない、洗練されている——それらはすべて「要領」「理解」「美」にも通じる。これでは、上手くないはずがない。
　そう言えば……と、別な人は茶道でも同じだと話していた。料理もそうだとまた別な人も言った。それに私も、習字の時間に「手に墨をつけてべたべた紙を汚すのは下手な証拠」と言われたことを思い出した。弓に限らず、すべてにおいて上手い人の共通点は、手際がいい。
　弓の上手さは、一般的に射形（しゃけい）（フォーム）とか、離れの鋭さとか、弦音とか、矢飛びとか、的中などで判断されるものだけれど、そういった日常的なところでも、かなり測れるものかも知れない。