弓引きにとって、夏場の眼鏡ほど邪魔なものはない。
　けれど、私位のど近眼（裸眼視力 0.04）ともなると、眼鏡を外してやる訳にもいかず（矢番えができないから）、汗でずり落ちるのを気にしながら、直しながら、弓を引くことになる。
　特に私の場合、その回数が半端ではない。立射の場合を例にとると、まずは本座で一回、取懸けの前に一回、引き終わった後に一回と、たった一射で三回も眼鏡を直している。入場からの坐射ともなれば、その数は数倍に跳ね上がる。レンズが厚い分眼鏡も重いので、仕方ないと言えば仕方がないことだけれど、ある大会では、打起ししたら眼鏡が一気にずり落ちてしまい、しょうがないと二の腕のあたりで上げようとしたら矢を落としてしまった、なんてこともあった。泣くに泣けない。（打起しした後にやり直した矢は無効になります。しかし、矢を落としても失格なので、結局は同じことだった……）
　そんな時、「メガロックｆ」というものの存在を知った。
　これはゴム製で、眼鏡のつるの端につけ、耳にしっかりとはまるようにするものだ。二個一組で、ご丁寧に収納ケースまでついている。
「数百円で無駄な動作が減るんだから、安いものだ」
　と、講習会に出かけた際、先生に紹介されたものだったが、確かにその通りだった。
　これをつけるようになってからというもの、本当に眼鏡がずり落ちなくなった。何しろ礼をしても大丈夫なのだから、普段ではまったく問題ない。かえって眼鏡をかけているのかと、不安にさえなったりした。しばらく慣れるまでは、必要もないのについ癖で眼鏡に手をやったりして。
　今では結構、重宝している。

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